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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第12章 隠蔽工作は愛の味
「テヒョンもきっとそれを分かってる。そして、あの子達五人にとてつもない才能が有る事もね」
「……」
「だから僕はイルトの引退もFBKの事実上の活動休止も許すつもりは一切ない。だからこそ、返還費用を引き落としてもない。」
「彼達の実力は世間に認められた」
「………どういう事ですか」
「テヒョンを側で見てきたリサさんだからこそ、サファイアを側で見てきたリサさんだからこそ──これがどれだけ異例中の異例かわかると思うんだけどね」
「韓国MAフェスティバルから番組の大トリをFBKにしたいと、さっきテレビ局から連絡が有ったんだ。」
「えっ、エムエーフェスティバル?」
「出演料は破格の五人で三億円」
「……ッ」
息をのんだ音が会長に聞こえたか心配になった。
私は、伊達にソン・テヒョンの嫁として生きていない。
韓国MAフェスティバルと云えば、k-pop市場・韓国市場最大と言われる毎年春に行われる音楽祭りだ。
司会は有名なアナウンサーの女性と、韓国芸能界のドンとも言える年老いた司会者二人で行われる。時刻は夕方の七時からゼロ時まで。つまり五時間、ぶっ通し。
「ウチのKBLOCKでさえも、ドリームボーイズでさえも、向こうから直々にトリのお願いなんて一切来てないんだよ。というか、トリを飾った事さえない」
「それなのに順番を飛び越えてその願いがSfireじゃなくFBKに来たんだ。」
「──リサさん、彼達をここまで熱く芸能界に向き合わせたのは他の誰でもない君自身なんだ」
「……もう一度、やり直す様に──MAフェスでトリを飾る様に、こんなチャンスを逃がさない様に──そう言ってやってくれないか」
普段は聞く事のない弱気な会長の声。
言われなくてもその通りだ、という気持ちを込めながら『はい』と一言だけ呟いた。
街並みは、初めて見る景色に変わってる。
直観で、もうすぐで『新家』の総本家に着くと分かった。
勝負は──ここからだ。