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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第12章 隠蔽工作は愛の味

「……。」

MAフェスティバルは韓国で活動する歌手やアイドルなら、誰でも目標とする場所だと思う。そこでの大トリなんて言わずとも、という感じだ。

スポンサーは私の家族である"帝国グループ"含む有名財閥、そして日本の一部上場企業も幾つか出資をしている。だから日本からも毎年何人か有名なアイドルやバンドグループが出るのだ。

今年のスペシャルゲストはアメリカで人気のフィフス・ハーモニーらしい。

それだけでMAフェスがどれだけのお金を費やされて出来ているフェスティバルなのかよくわかる。そこの大トリに選ばれて──何よりも向こうからの誘いを受けたのがデビュー間もないFBKだなんて……。

彼達の実力を一番分かっているはずの私でも驚きが先に来てしまった。


「俺らがイルトに言ってみる」

「ジェジュンっ」



「──目標としてきたのは"アイドルで有名になる"って所だろ、アイツがどう言うのかは分からないけど、MAフェスの大トリなんて、俺らの夢そのものみたいなモンだから」

「……ありが…と」

完璧に考え直してくれたとは到底言えないだろう。

だけど、あんなに頑固なリーダーに直談してくれるという事が私は嬉しかった。


鼻の下を伸ばしながら灰皿のタバコをゴミ箱に捨てようとした時……ドアの外から声が聞こえる。

「ジェジュンさん」

「はい?」

低くて威圧感のある声。その筋の人間ってのは全世界共通で"男らしい声"なのか?


「あの──」

「いいよ、入っても」

「お邪魔します」

スキンヘッドの男は、そう言うと私達全員に礼儀を重んじる韓国人らしく深く一礼してから息をゆっくりと吸い込むと、聞く筈のない言葉をこの部屋で吐き出した。


「皆さまに来客がいらっしゃいました」

「……帝国財閥の『ソン・テヒョン』さんです」


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