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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第12章 隠蔽工作は愛の味
顔を上げた彼の顔は案の定、涙で濡れていた。
本当に私の事になると、どうしてこうも彼は涙もろいのだろう。もしかすると、涙線と尿道が繋がる瞬間が有るのかもしれない。
一度だけ痛いほどに抱きしめ返したテヒョンは、静かに私の頬にキスをすると再度姿勢を直して、今度は──FBKに頭を下げた。
だけど、さっきと違い下を向いていない。
まるで──自分の"ナニ"かを認めるかの様に、しっかりと彼達の方向……つまり前を向いている。
「俺な、お前らに嫉妬してたんだ。リサが取られるんじゃねえかって」
「リサが──俺よりもお前らに時間割いてた事にすげえ腹立った。それでお前らの出生に対して最悪で人間じゃねえ様な事を会長とリサに言ってしまったんだ」
「………。」
左の頬にニキビが一つ出来ていた。
肌荒れなんて無縁のテヒョンなのに……。こんな芯のあるニキビが出来た彼を見るのは、もう十年位一緒に居るけど始めてた。
それほど、テヒョンはテヒョンなりに色々と悩んでいたのかもしれない。
「お前らはマフィアの子だ、バレたらどうなるとか凄い嫌味を思いついては「──ヒョン、その通りです」
「……ああ?」
「俺達はマフィアの子なんです、しかも半グレとかそういう半端な家庭の子じゃないんですよ。」
「そういう世界を知らなくても一度は名前を聞いた事あるだろうってレベルの家庭に生まれた一人息子たちなんです」
「しかも……」
「ヒョンは帝国の"情報ルート"で既に知ってるかもしれませんが」
「イルトは人を殺しました。」
「あんたらっ」
「いいんだよ、ヌナ。」
「良くない!確かに彼は既に知ってるけど、それは何度も何度も言うべきことじゃないでしょ!」
「だけど!言わねえといつかはバレる事なんだよ!」