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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第3章 共働きの財閥
帰り際に彼達がおいていったのは、五人分の香水の香りだった。
トムフォードとディオールと……シャネル。
有り難いのは私達愛用の『五番』じゃなかった事だろう。あんな色男五人をアイが見たら、恥ずかしがって目を合わせなかっただろうな。
あの子も子どもと云えど女の子。テヒョンの事はパパとしてしか見てないけど、ジン君たちを見ると未だに顔を赤くしている。
「はあっ」
小さくため息をつきながら、ソファーに寝ころがった。ブラジャーを手際よく取ってそこら辺に投げた私を上から見下す彼。
私が、あの小一時間でここまで疲れたのはコイツのせいだって言うのに、どこか涼し気な顔をしているから腹が立つんだ。
「あのなあ、お前は女なんだからブラジャー投げ捨ててんじゃねえよ」
「うるさいな、小姑みたいな事言わないでよ」
「ああ?誰が小姑だって?」
小言を言いながらも、家政婦さんたちに見つからない様にソレを拾ってバッグの中に入れてくれるんだから二人の時は、テヒョンの方がしっかりしているのかもしれない。
まあ部屋を片付けたりとか、そういうのは未だ出来てないけど。
やっぱり父親になって変わったのかな……。
「私は明日から、デビュー一か月前らしく毎日事務所に行って彼達の面倒を見る必要がある訳ね」
「お前も俺達のカムバック前を見てるから分かるとは思うけど、想像以上にハードだぞ。しかも一か月前なんてティーもマネヒョンもほぼ寝ないんだからな」
「……分かってるわよ。でも私がやり切ったらパンさんへの恩も返せるでしょ?」
「恩?」
「アンタもバカじゃないんだから」
「帝国夫人としての私は確かに暇だけど、それは時期的に今だけ。もう少しもすれば株主関係の会食に私も出ないとダメになるんだし」
「テテとアイの事もある。ずっと暇、100%暇ってワケじゃない。それを分かってるんでしょ?ソン・テヒョン」
「──。」
「でも、あんな人気も話題も絶頂期の時に私とテヒョンの付き合いを許してくれて、快く結婚にも『おめでとう』と言ってくれたパンさんだもん」
「そんな人が率いてるBNだもん」
「アンタが次期サファイアを作ってやりたいと思うのも、アイツ達を叩き直して変な風をこれ以上吹かさない様に、と思うのも当たり前なのよ」
「だから私が覚悟決めてアンタの顔立ててやるって言ってんのよ」