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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第14章 信用は危険への階段

「勿論、それはせっかく掴み取ったデビューであり人気である。だけど──それ以上に本当に親身になって、一生懸命に共に歩いてきてくれたリサちゃん、貴方だと思うよ。俺は。」


「そんな私は……」


「前までなら五人でご飯を食べて、そこに親が居ようが居まいが、どこのクラブは水が良いだの何だの言っててな。コカイン決めて女抱いて──」


「本当に散々な事をしていたし、俺たち親もそれを言えるだけの人間ではないから彼達自身がその行いが愚かだということに気付く時を黙って待つしかなかったんだ。」


「だけどリサちゃんと一緒になってからは全然違うよ。」


「ウチのがクラブ行きたいと呟けば、イルトが『ヌナに絶対キレられんぞ』と止めたり…」

「コンビニで買ったアイスを皆で分けて食べることに幸せを覚えたり、『ありがとう』や『ごめんなさい』と云った言葉を目を見てちゃんと言える様になったり」



「本当にリサちゃんには──俺たちが甘かったせいで、色々と迷惑を掛けたと思う。勿論、今回のこの事件も」


「でも……それでも、いつもコイツ達を信用してくれて、愛してくれて本当にありがとう。父親として心からの礼を言うよ。」


差し出されたこの手は、今まで何人の人を殺してきた?地獄に落としてきた?

考えても分からない。

でもきっと、あの新家のトップだ。

想像以上の人数だろうし、想像以上のことをしてきたんだろう。


だけど──不思議と何も怖くなかった。その手に触れる事に対しても何も思わない。


それは何故なんだろう。


ああ、きっと目の前の彼とイルトのアボジが、今はマフィアのトップではなくヤンチャな息子を持つ父親の顔をしているからだろうか。

にこっと微笑んでその手を掴んだ私の手のひらは、多分彼よりも苦労を知らない。


それは──、そう、たった今到着してこの場を見守ってるテヒョンのおかげだ。

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