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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第16章 衝撃のヨクサムドン
「ユンサの人生はユンサのモノでしょ。イヴァンの人生も誰のものでもなくイヴァン自身のものよ。──多少お金を稼いだら大学に行って両親を反面教師にして生きてみるとか、色々と出来ることは有ったでしょ」
「それでも──」
「それでもッ、罪のない子供たちを誘拐し、臓器や人身そのものを売買して、コカインも売って自分にもキメてってしてたのはアンタら自身じゃない!」
「何がオンマがそうだったから俺もこうなんだ。なのよ」
「その道を選んで、その道でごはん食べてきたのはアンタでしょ!誰もその道で生きろ、なんて命令はアンタにしてないはずだし、アンタにも命令される筋合いはないと言い返せる強さは当時から有ったはずよ!」
「そんなこともしてないのに──」
「そんなことも分かってないのに──」
「己の劣等感の源を環境や親のせいにしてんじゃないわよ!!」
キーンと自分の高い音すら、脳に響く。
肩で息をする様に、目をつぶり身体を大きく動かしながら三回目の深呼吸を終わらせたときだった──。
生臭い匂いが鼻について、目を開ける。
「ユッ……ユンサ!」
私の視界に入ったのは引き出しから取り出したであろうナイフで自分の手首を何度も切っているユンサの姿。
血が、だぼだぼと彼の周りに水たまりの様に溜まっていってる。
「ユンサ!もうっ、もう止めて!!」