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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第16章 衝撃のヨクサムドン
腕を大きく振り上げた彼と私の手では……彼の腕の方が少しだけ早かった。
とどめの一回、という様な力の入った傷から血が、さきほどの鼻血の様に飛び出るとその衝撃でユンサの目は半開きになり唇の端に泡がたまる。
クスリの知識がない私でも、この状態はヤバい。と咄嗟にそう思った。
だって彼は既に薬で身体が弱っているはずだ。
それなのに追い打ちをかける様に、いつも以上のクスリを直接血管に流し込んで、睡眠薬と思わしきモノを飲んで、刃で血を出している。
血なんて止まるはずがないし、この状況で泡を吹かない方がおかしい。
「ユンサ!目ェ開けてよ!」
「……ッ」
口をパクパクさせている彼こそが、薬物中毒者の末期症状そのもの。
パニックにならない様に必死に自分自身の名前を心の中で呼び続けながら、もう痛み続ける後部も鼻も気にしてられない。そう意を決し投げ捨てられてあるバッグの中から携帯電話を探す。
「ねえ、ユンサ!あんた死ぬわよ」