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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第16章 衝撃のヨクサムドン
エレベーターのモニターには0時半と時間が表示されている。
この時間帯なら──まだコンビニも飲食店も開いてるだろう、ましてや此処はこんなマンションが建つくらいだから、そこそこ繁華街のはずだ。
とりあえず、どこか開いてる所か人物さえ見つけることができたら……まだ状況はマシになるだろうな。
──こんな高級マンションのエレベーターだから本来ならば、進むのは早いはずなのに一階と21階がこんなに遠いなんて思う私も、相当焦っている。
思い返すと自分の死に対面したことは何度もあるが、人の死に対面したのは──今日が初めてだ。
助けなくても良い相手のはずなのに……、目の前で死んでいくのを見て『ほら、見てみろ』とコーヒーを飲みながら優雅にそう一言いうべき相手なのに……。
私はやっぱり、財閥の嫁でもマフィアの嫁でもない。
ソン・テヒョンという一人の人物の奥さんである、たった一人の『凡人』なんだ。
人よりも少しだけ努力をして運を呼び寄せて、少しだけ強くて、少しだけ正義感の強いそんな凡人。
その証拠が──私がユンサを助けているこの行動だろう。
……凡人の私には、相手がたとえ誰であっても目の前で死んでいく姿を見るのは耐えれなかった。