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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第16章 衝撃のヨクサムドン
こんな夜中に、血まみれの男女が二人入店してきたとなれば驚くし、セカンドパンチでその女性が私なんて。
「お願い、すぐに救急車を呼んで!」
「……ッ、へっ」
まだ21とか22歳くらいかな。
端正な顔立ちと黒髪の爽やかなヘアー、そして白くてキメの細かい肌は、このままBNのオーディションに出しても俳優枠あたりで通るかもしれない。
「事情は……」
「事情は後で説明するからとりあえず店の電話で救急車を呼んでって言ってんの!で、携帯は私に貸してちょうだい!!」
動くことも話すことも、ままならない青年に少しだけイラつきを覚えながらそう叫ぶと、分かりました!と直立不動で返事をする。
そこからは頭の回転が元に戻ったみたいだ。
店の電話らしき物で救急車に必死に電話をする姿を片目で確認しながら、貸して貰った携帯電話で、覚えている番号にコールを掛けた。
「……ヨボセヨ?」
「普段は登録してない番号なんて出ないのにね。どうしたの。」
元気の無い、精神的に完全に参ってしまっている声。
店員さんの男の子は電話越しに救急隊員に言われた通り、ユンサの顔に水を掛けて必死にビンタをしている。
その甲斐あってか、歩いて此処に来る時の表情よりはまだ生気がある様にも思えるけど──物の見方なんて、その人の感情ひとつで変わってしまう。
俯瞰して考えると──やっぱりユンサが生死をさ迷っているのは間違いない。