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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第4章 想像以上の実力
「あ!リサヌナァ!」
練習室のドアに手を掛けた時に、後ろから抱きつかれる。
「……なっ!アンタ…っ!」
前途多難という言葉がよく似合うだろう。
ヌナ、なんて可愛い呼び方で抱き締めてきたのは昨日の五人組の一人だった。名前は分からないけど左端でニコニコしていた童顔の男の子。
この子がトムフォードの香水付けてるんだ。
「まさか本当に来てくれるなんてね。」
「あそこまで言ったら行かないとダメでしょ、ってか手離して。これテヒョンに見られたらアンタ、殺されても可笑しくないわよ。」
わざと見える場所に付けられた二つのキスマークは彼の嫉妬心丸出しって感じ。
あれだけ激しくされたのはいつぶりだろう。
「ヒョンも独占欲強いね、こんな所にマーク付けて初日出勤させるって。」
私の首をなぞろうとする右手を掴んで、思いっきり引っ張ると間抜けな声を上げる童顔君。
「ちょっヌナ!痛いって!」
中指と薬指に付けられているダイヤギラギラの指輪は両方ともカルティエの今期シーズンのモノ。
腕につけられているシンプルなブレスレットはティファニーかな?薄いターコイズブルーのシャツはトムフォード。
こいつ達……本当に何者なんだろう。
財閥とかどっかの大きな会社の息子ならテヒョンが知ってるはずだ。
でも『俺も何でか知らねえけど金持ってるし』という言葉を聞く限り、どうしてここまで羽振りが良さそうなのはあの人自身、本当に知らないんだろうな。
「ヌナって良い香り、テヒョンさんと同じ香水使ってるんだね。」
「うるさい、無駄口叩かないで。ほら入るよ!」
背中をポンっと押すと、諦めたかの様に練習室のドアを開けてくれる彼。
途端に視界に広がったのは、練習なんてせずに何やら四人で一冊の雑誌を囲んでいる風景だった。