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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第17章 彼なりのケジメ

続きの内容を想像出来てしまう自分が怖い。どれだけ場慣れしてしまったんだろう。
「元気に生きてたよ。デカイ家で、二人とも。勿論、散々コカインきめてたせいで老けちまって見れも出来ない顔だったけどな。」
「持ってる畑と昔からの仕事で金には困ってなかった。俺が行った時……親父は新しい女を抱いてて、オンマはリビングでウイスキーを飲んでた。」
「オンマは……オンマは俺を見るなりすげえ嬉しそうな顔をしたんだ。自分の元へ戻ってきてくれた、とでも思ったのかもしれねえな。」
「でも、俺は喜べなかった。」
「俺は……」
「俺は、オンマとアボジと新しい愛人の三人をメッタ刺しにして韓国に戻ってきた。」
「使いの者達は俺が息子だと知っているから、一人で静かに門を出ても後を追いかけてくることすらしなかった。……きっとアボジが俺に殺されたと分かったのは、アイツ達が皆で夕食を取る18時頃だろうな。」
「だから、俺は今ここに居る。」
「なあ、お前が兄貴をここに連れてきた理由は『裏社会の人間は裏社会の人間らしく死ね』ってことなんだろ?」
イヴァンが──家族を殺した。
この一文が何度も私の頭の中でループする。この男が……ユンサではなくイヴァンが……まさか、家族を殺るなんて。
それほどまでにユンサが傷を負ってしまった事に取り乱したの?
──いや、彼達は気付いていたんだ。
分かっていたんだ。
自分達は家族のせいにしている、自分達のした事を身内のせいにして正当化しようとしている、と。
オンマは決して子供の生活を考えて、その中国マフィアと一緒になった素敵なオンマではないと。

