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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第4章 想像以上の実力
「証言一メイクスタッフ、カンナ」
「ジュンに声をかけられたのが始まりで、一か月後には体の関係に……その後、その事実を知るイルトが『俺じゃダメか?』と言ったのが二人と三角関係になった原因」
「練習室でイルトが『俺が勝ちだ、カンナはジュンを放って俺に来るほどだったって事だな、アイツはもう要らねえわ』とメンバーに言っているのを聞いたカンナは自殺未遂を起こす」
「メンバーに聞いた所、それは事実だった」
多分、年月的に35人ほど前のスタッフの証言だろう。
適当に下までスクロールしてみると似た内容の証言が幾つも有った。
違うのは引っ掛けたメンバーの名前と被害者であるスタッフの名前。
揃いに揃って女の子たちが自殺未遂をしたり鬱病の診断書を貰ってきているのが、逆に面白い。コイツ達は──女の子を本気にさせる才能をも持っているんだろうな。
「ね、引くだろ?」
「そうですね、彼達はアイドルになりたいみたいですけど、こんなアイドル居るんだってなりますね。」
「……アイドルになった先に何が有るんだろう。彼達の見た目とお金の使い方なら芸能界じゃなくても、女と自由に遊べると思うんだけど」
「有名にもなれますしね」
『有名』か───。
「あっ」
「どうかしました?」
「いや……」
そうだ、彼達は有名になりたいんだ。
誰かから私が喫煙者である事を聞いたんだろう。
バカラの灰皿を机の端に見つけた私は、それを自分の前に置いて、さきほどと同じ様にタバコに火を付けた。
私が肘を机の上に置いて──、そして意地悪い顔でタバコを吸う時は俗に言う『良い事』を思いついた時。
昔の上司なら、この行動をした私を見ると……何が起こるんだ?と黙って見守ってくれたに違いない。
トチ狂ったかの様なスピードで、その証言をコピーして別のPDFに張り付けた。
そして『中絶』とか『自殺未遂』という死に関わる言葉を全て『自主退職』と書き換えていく。
隣の眼鏡のカレは、いきなりタイピングをしだす私を不思議そうな眼で見つめていた。