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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第4章 想像以上の実力

普段テヒョンは仕事を家に持ち帰らないし、私の事も仕事関係では頼ったりしない。
だからだろう……どこか懐かしいこの感覚。日本で働いてた時は、大きな山乗り越えるとなれば、いつもこんな感じだったな。
手首を頭上でブラブラさせていると、急に覚えのある香りがふわりと私の近くに舞う。
──その香りを確認する間も無く、既に凝り固まった右腕をガッチリと掴まれた。
「……イルト」
「まだ居たの、ヌナ」
「アンタこそもう帰ってきたの」
「もうって──今、18時5分だけど。三時間くらいは楽しませてもらったわ」
私の視界に入るのは、確かに言いつけ通りヴェルサーチの紙袋二つとシャネルの紙袋、ルイ君がモデルをしているグッチの袋も有った。
「えらいじゃん、ちゃんと言いつけ守って爆買いしてきたんだ」
「……これ返しに来た」
「ああ、はいはい。」
渡されたのはダイナースのカード。
「どうだった?」
「何が」
「ちゃんとギャラリーに囲まれた?」
「ツイッターで検索したらすげえ出てくると思うけど、遭遇情報とか隠し撮りの写真とか」
「へえ。ギャラリーはどん位だったの」
「シャネルで買い物してる時が一番で、多分外に100人くらいじゃねえの?」
「やるじゃん」
「カンナムのシャネルだからな、人が集まりやすいんだろ」
──あのシャネルに行ったんだ。私とテヒョンの思い出の支店。良い思い出も悪い思い出も沢山詰まっている。
あの時から私は彼の事を『シャネルを着た悪魔』だと思ってたのかもしれない。
「──っ、ヌナ行かなくて良いの?」
「何が?」
何故か知らないが険しい顔を一瞬だけしたイルトは、時計を指さしながらそんな事を言った。

