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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第5章 嫉妬か否か
──その顔をちょっとかわいいと思ってしまった私は大分と母になり丸くなったんだろう。
勿論、隣のハジンちゃんはワケも分かっていないだろうけど、彼の笑顔に釘付けになっている。
「ロック、か。そんな嫌味は初めて言われたかもしれねえわ」
「ロックはアンダージャンルだからね、韓国では。そりゃ例えるのもヒップホップ系になるでしょ」
そうだ、韓国に来て驚いた事が一つあったのを思い出した。
……日本はどちらかと言うとポップの市場が一番で、その下にはロックがついている。だからラルクはスクエアガーデンでライブが出来たし、KAT-TUNの大人気ナンバーもロックテイストだった。
逆に韓国でメジャーなヒップホップは日本では聴く人が限られててアンダージャンルと見なされてる部分がある。日本と韓国では『ロックとヒップホップ』の有り方が逆なんだ。
「──ちょっと待って」
まだミラー超しに私を見つめているイルトの目を、今度は真面目な顔して見つめ返す私。
「何、帰りたいとか言うんですか」
今は……こいつのタメ口と敬語が混ざるクセも気にならなかった。それほどの閃きが私を襲ったからだ。
「違うっ、そうよ……!ロックよ」
「はあ?」
「あたしね、思ってたの。韓国は売れる基準も美の基準もお洒落の基準も一つ、多くて二つしかないって。」
「今のアイドル業界ってキャッチーなポップかヒップホップ系しかないでしょ。ロックはバンドしかしてない、それも──まあ人気かとか市場がデカイかって言われるとそうじゃないのよ」
「……。」
「今回のA面として販売予定だった『スプリング・ラブ』は却下」
「本気かよ」