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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第5章 嫉妬か否か
「あれは確かに良い曲だし、絶対に売れるわよ。言い切れる。──でも、せっかくこれほどまでに注目されてるのに、その内に世に出すシングルがあれじゃ勿体な過ぎるのよ」
「ずっと胸に引っかかってたの。良い曲なのにどうしてイマイチだって思ってしまうんだろうって。その理由は分かった、それは──アンタらの実力が飛び抜けてるのに歌詞やメロディーの意外性が飛び抜けてなかったから」
「勿論、ジャケ写も宣材写真もそう。普通のアイドル・ヒップホップグループなのよ」
「これじゃKBLOCKに勝てない。」
「……ヌナは何、じゃあロックで勝負をしかけるって言いたいの?」
「そう。だけどゴリゴリのロックはダメ、まだ韓国国民がついてこれない。だからこそポップ4割ロック6割でいく」
「ミックスか」
「アンタ、あたしの事送ったらどうせハジンちゃんとご飯食べて家かホテルでセックスするんでしょ?じゃあ時間有るはずよ、ネットで調べてみて『KAT-TUN』って」
「日本のグループですよね、アカニシさんが居る」
「そう、デビュー当時から三年以内の楽曲は基本的にロックメインよ。私は──アンタ達を韓国のKAT-TUNとして売り出す。」
「嵐じゃなくて?」
「嵐は──ドリームボーイズに任せよう。しかもね、KAT-TUNがもしあのまま六人で活動してたら嵐はあそこまで人気にはなってないわ」
「私は日本人で、彼達が人気になる過程を見てきたからこそ言い切れるの。アンタ達は日本のロックアイドル風にデビューする、そしてSMAPのバラエティに強い要素を取り入れる」
「もしかしたら──これで、サファイアとは違う土俵だけど同じだけの地位を手に入れる事が出来るかもしれない。」
最後の方はもう独り言だった。イルトは時々前を見ながらも、ちゃんと私の目を見つめている。──こいつらも私に賭ける、と言ってくれたんだ。
韓国アイドルという型が決まってる世界で、初の試みをするんだから、私もこの子達の才能に賭けないといけない。
ドアポケットに携帯灰皿が置いてあるのを見かけた私は、許可も取らずに本日何度目か分からないタバコに火をつけた。