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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第5章 嫉妬か否か
「……ヒョンだ」
「──怒ってるっぽくない?」
「多分」
しっかりと店前に付けられた車の中をのぞき込むとイルトを見つけたのだろう。素早く郷部座席に目線を移している私の旦那さん。
「ちょっとヤバイかも、……まあそういう事だから!チケットはどうにかするから、明日の朝六時には事務所集合で!メンバーにも伝えてて」
「はあ!?六時?」
「朝から行って、ちゃんと夜には帰ってくんのよ!絶対だから!じゃーね、サンキュ!」
最後は適当そのもの。
勢いよくドアを閉めてから、目の前でとてつもなく怖いオーラを醸し出している旦那の元へと走り出した私。
「あっ……あの、遅れてごめん!」
謝罪の言葉を述べた私の目なんて見もせず、そそくさと腕を掴むと入口の隣にある少し奥ばったベンチに強引に座らせられた。
テヒョンは無言で地面にヤンキー座りをして私を見上げている。
「……何でアイツに送ってもらってんだ」
「えっと──」
二つ外されたワイシャツのボタンから見える胸元が色っぽい。この怒り方を見る限り彼はずっと店の前で私を待っていたのだろう。
「朝、俺とお前は時間が合わねえから個別で迎えに行かせるっていったよな?」
「あっ、てっきり忘れてた」
「──携帯の電源切って、迎えの車もすっぽかして、アイツに此処まで送ってもらったてか?えらいご身分になったことだな、ああ?」
「俺、昨日お前を抱いてる時何て言った?『俺はお前を信用してるけど、それでも愛してるから嫉妬もするし心配もする』って言ったよな」
「お前は、そんなに愛してくれてる俺を心配させる様な真似を平気でしたんだよ。それがどういう事なのか分かってんのか」
大声を出すワケじゃない。むしろいつもよりトーンもボリュームも低くて小さい。
だからだろう。彼が本気で怒っている時の行動だからこそ──目の前で黙って私を見上げるテヒョンが本当に怖くなる。