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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第6章 期待ばかりの日本旅行
着いたのは六時五分前だった。言い出しっぺの私が遅れるわけにはいかないから、一目散に彼達専用の練習室へ駆け出す。
警備員さんと居残りスタッフしかいない静かなビル内にパンプスと床が重なりあう音が響いた。
「……はっ、セーフ!!」
部屋に入るなり両手を横に広げて必死に目の前の五人にアピールする私は野球の審判さんみたいになってることだろう。
「うわ、ヌナ。酒臭いんすけど」
「アリー、あんたも人の事言えないから。」
「てか、一分アウトだけど」
「ジェジュン……ごめんなさい。」
不器用なりにこうやって集まってくれている五人はやっぱり、人間性はカスじゃないんだろう。男としてはカスなだけで。
「はあっ、本当にさ!俺達にはこんな早起きさせといて、ヌナはお酒の臭いって……昨日クラブでも行ってたの?」
「ジュン、何寝ぼけたこと言ってんの。」
「ヌナはテヒョンさん達と飲んでたんだよ、昨日」
「何でお前が知ってんだよ。」
「俺が事務所からその場まで送っていったもん」
「……へえ、やっぱり今回もイルトの勝ちか」
「はあ、朝からなーに言ってんのアンタら。ゲームゲームって実際は落とす気ないんでしょ?」
「本当に勝ちにきてるなら憎まれ口も叩かないはずだし、私のことお姫様みたいな扱いするでしょうに。」
「素直にゲームなんかどうでも良くなったって言ってみなさいよ。」
「………。」
「そんな口ばっかり叩いてる時点で、このゲームは開始してる様に思えてルーレットの壊れた人生ゲームみたいなもんよ。進みようが無いし、それはそれで良いってアンタらも思ってるわけ」
途中に寄って貰ったコンビニで買っておいた水を一人ずつに向かって投げ捨てた。
全員、反射神経が良いのか落とすことなく見事にキャッチしてみせる。若さなのか生まれ持ったものなのか……。