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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第6章 期待ばかりの日本旅行

韓国から大阪までは1時間40分だった。

久しぶりに食べた機内食はやっぱりお世辞でも美味しいとは言えない。本当、何て言うんだろう。お腹を膨らませるための最終手段って感じだった。

「リサ様、ご準備が整いました。」

マネージャーであろう少し年配の女性がそう言ってくださるので、目配せでメンバー達に機内から出る様に指示する。

「へえ、さすがヒョンの嫁。入国審査までvip扱いなんだ。」

「ただのビジネスクラス乗車組だと、ここまでしてくれねえもんな。やっぱり世界の帝国だわ。」

既に並んでいる人達のとなりで特別にレーンを開けてもらう。皆からの視線は勿論私たち六人だ。


「この度はアシアナ航空をご利用頂きありがとうございました」

深々と頭を下げて、私たちの前から姿を消そうとするマネージャーさんを呼び止める。

「あっ、あの!」


テヒョンいってたよね……。

イヤでも帝国会長の嫁が染み付いてるお前に、もう一回人の為に会社の為に頭下げることが出来るのかって。

確かに、私は営業から離れてもう十年近くは経つ。


でも──仕事は仕事だと割りきれるし、頭を下げて事が円滑に進むなら、そんな事も余裕でやってのける。

その根本は変わってなかったみたいだ。

咄嗟の言葉は、先程のマネージャーさんと同じ位頭を深々と下げたと同時に出たものだった。

「この子達、一ヶ月後にBNエンターテイメントからデビューすることが決まってるFBKというアイドルグループなんです。」


「既にご存知かもしれせんが──各自、性格にかなりの問題が有ります。」


「でも、仕事に対しては真面目で音楽に対してもアイドルとして成功したいという部分に対しても、本当に一途な思いを持ってる子達なんです。」


「だから、お見知りおき願います。」


韓国語で並べた言葉は、まるでソン・リサが使うとは思えないほど下からで、何より丁寧だ。


「お……お願いします」

つられる様にしてそう言った低い声に驚いて顔をあげる。


「アリー、ジュン……」

私の事をいつもからかってばかりのアリーと、好き好きオーラを出してくるジュンの二人が、人目を気にすることなく慣れてないながらに頭を下げていた。


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