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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第6章 期待ばかりの日本旅行
どことなく空気が悪いのを肌で感じながら、前持って調べていた服屋さんを目指す。
スカウトマンや仕事終わりのホスト、風俗嬢──まあ『夜職』と呼ばれる仕事をしている人達が沢山歩いている事だ。
本来なら普通の人間は仕事に向かっているか会社で働いている時間。
それとは反対に『仕事終わった組』が宗右衛門町で横一列に並んで歩く異様なオーラを出している男五人を見つめている。
裏通りに続く道を、大男三人分くらいの距離を開けて前を歩いている私が曲がりかけた時……一番のお目当てだった看板がすぐ前に見えた。
「ああっ!」
思わず大きな声で叫んでしまう。
「何、ヌナ」
後ろから聞こえるのはダルそうなジュンの声。
本当この子って何だかんだ言いながら私の事を構ってくるんだよね。一番絡みやすいかもしれない。
「これだよ、これ!あたし此処でアンタ達の衣装を揃えようと思ってたの」
看板には『ant』の英語三文字。
とてもシンプルな作りだった、白色のドアを引いてメンバーを先に入らせる。
奥から可愛らしい女性の『いらっしゃいませ』という声が聞こえた。
「……かなり日本っぽい服装じゃね?」
韓国語を聞いて接客をすぐさま諦めた20代後半くらいの女性はニコニコと笑いながらレジの方へ戻って何やらハガキを書いている。
顧客であるホストやホストクラブに通っている貢ぎ癖のある女性達にセールのお知らせでもするのかな?
それならそれで、アパレル業も大変だろう。
お世辞にもとても大きいとは言えない箱の作りだけど、ディスプレイの仕方が上手だからかドンキホーテみたいにお客さんを疲れさせる様な事は無い。
「あのっ」
「あ!日本人の方なんですか?」
私より少しだけ年下か、もしくは同じ年齢位か──。
帝国の夫人だと分かってなさそうな彼女は、人懐っこい笑顔でそう聞いてきた。
「そうです、私だけ日本人で後の五人は韓国人です」
「へえ、みなさん格好良くて素敵ですね」
「そうですか……ね?」
苦笑いで首をかしげてみると、右肩を二度叩かれる。