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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第6章 期待ばかりの日本旅行
「ヌナ、これはどう思う?」
ほら、やっぱりこういう場面で一番先に声を掛けてくるのは童顔王子なんだよね。
彼が持ってきたのは真っ黒のコートにリアルファーがついている代物。
──これはそうだなあ、ハイド過ぎる気がする。
「えっと……」
似合わないって素直に言って良いんだろうか。と少しの良心が私の心の中で問いかけてきたのも束の間、その後ろからダルそうな声が聞こえる。
「ジュンにそれは似合わない。お前はアイドル王子様のゴリゴリ路線でいくんだろ。」
「そうだけどさあ、イルトがヒップホップ辞めてロックがデビューシングルになるとか言うから俺もhideさんとか目指した方が良いのかなって思ったわけじゃん」
「ああ、ジュン!これは?」
見つけたのはダメージが沢山入った真っ赤なスキニーと、セット売りされてある黒赤のチェックシャツ。多分、このシャツを腰に巻くんだと思う。
「……ええ!何か可愛い系じゃん」
「あんたはそれで良いのよ。そんな童顔して毛皮なんて豚に真珠だわ」
──やっぱり、私が他人に気を遣うなんてのは無理なんだろう。そこに仕事が絡んでいるとなれば尚更だ。
どこか本気で悲しんでいそうなジュンの腕を、今度は私が女なりの精一杯の力で掴んでから奥にある試着室へ押し込んだ。
「着替えろってこと?」
「そう。」
「中はどうすんの、トップス」
「あーそれは……ちょっと待ってね。」
直ぐ後ろには沢山の七分丈のシャツがハンガーで吊るされている。グッチやシャネル、中には聞いた事もなければ見た事のない無名な海外ブランドのものまで。
「これでしょ、やっぱり」
ぽいっと投げたのは、テヒョンも大好きなルシアン・ペラフィネのドクロマークが大きく描かれてあるシャツだった。
大きく丸く裂かれた首元が可愛いだけじゃなく、上手に色気とかロックっていうのを表していると思う。
「さすがインポート。まさかペラフィネまで有るなんてね」
「ね?私がここに目星付けてた理由分かるでしょ?」
──そう、ここはインポートショップだった。
ホストスーツらしい派手なジャケットもあれば、こういう風に日本支店未入荷のシャツとかジーンズが置いている。