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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第6章 期待ばかりの日本旅行
「勿論、来年や再来年がどうなってるのかは分からないですが──」
「でも、今こうやって好きな事で食べてるのは私が根性キメて胸はったからかもしれません。……結局、お客様の言う通り『覚悟のないやつに選択肢なんて増えるはずがない』んですよね」
年の近いであろう女二人が、お互いの名前も素性も知らずにどこか深い話をしているこの感覚ってミナミだからなのかな。
これが韓国だったら有り得ないだろう。
もっと言えば此処が梅田だったら私の事を帝国夫人だと気付き野次馬が側に集まってきているかもしれない。
縁とかタイミングっていうのは不思議なもんなんだよな。
──ジュンの服装が良い感じに『新しいFBK』のロールモデルになったんだろう。
元々センスが良い彼達は、自分達なりに考え込んで服を選んでは順番交代で試着室に入っている様だった。
……既に決まったジュンは、椅子に座ってスマホを触ってるけど。
「どう、調子は」
「今から試着してくる」
「そっ、終わったら呼んでね。」
「ああ。」
本当リーダーを筆頭に、皆わたしにタメ口利いたり敬語使ったり大変なことだわ。
当の本人たちは気分で変えてるだけ……いや、変えてるつもりもないんだろうけど、私としては『リサ』と呼び捨てにされたり『ヌナ』と言われたり色々と振り回される部分が有る。
「アンタだけだわ、ジュン」
肩に手を回してからそう言うと、急いでスマホの画面を消していた。
誰も見ないっての、と言いたかったけど、ぎりぎりの所で止める。
「何が?」
「ちゃんといつもどこでも、ヌナって呼んでくれるの」
「ははっ、じゃあ夜もヌナって呼んでやろうか?」
「はいはい、お断りしときます。」
華麗なスルーに、わざとらしいムカついた顔をしながら中指を立ててくるジュンの頭を叩いた瞬間をイルト以外の他のメンバーが見たらしい。
小さな店内が大きな笑いに包まれた。