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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第6章 期待ばかりの日本旅行

「うん。こういうのはねメールとかよりも名刺見せてアンタ達見せて、口頭でメリット説明した方が上手くいくのよ。」

「まあ向こうには断る理由がないけど。ほら、一応私に根付いた営業法ってやつ。」

空になったカップをゴミ箱に捨ててから、溢れる人を掻き分けて、もっと熱気のあるホールに向かう。


「……チッ。」

数秒だけ見つめあった見知らぬ男に舌打ちをされた私。

何か驚いた様な顔をしてからの、そんな喧嘩を売る様な行動だから軽く面食らいそうになった。


「どうした。」

「ジェジュン…、いや何もないよ。」

いつの間にか隣に居た背の高い彼に、そう返事をするけど信じてないみたい。

「知り合い?じゃないと、いくらロックライブだとは云え舌打ちはしねーだろ。」

「いや、知り合いじゃないんだよね。足踏んだとかそういう訳でもないし、あたしの事を向こうがテレビとかで見たのかな?」

「むしろ、それなら舌打ちしなくね?」


「──いや、そんな事もないよ。帝国夫人ってことはアタシは韓国籍だもん。そりゃ日本人にも私の事を嫌いな人は沢山居るよ。」

「……国際問題ってこと」


「そう。未だに右翼達が帝国があーだこーだ言ってるのと一緒。日本にもそいうステレオな考えの人が居るからね」

「交わることは一生ないんだろうな。」


「……だと思う。」

歴史問題と愛なんて関係はないのに──やっぱり、どこかで差別や区別といったものが生まれてしまう。

特に日本と韓国なんて、アジアで一番仲が悪い様に思われる国だろう。
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