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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第7章 記念すべき四月
最後のイルトの言葉に驚いて固まっている暇は──ないようだ。
テンポ良く響くシャッター音と共に表情やポージングを変えている目の前の五人組の姿をしっかりと目に焼き付ける……と同時に裏ショットとしてツイッターに載せる為、足元だけを映した写真を何枚か撮ってみた。
センターは勿論、イルト。
真っ白のナポレオンジャケットにはゴールドの留め具がいくつも付いてあった。
下は伸縮性の有るジーンズで、ダメージは無しの黒色。だけどヴェルサーチらしく派手なデザインが所々に散りばめられている。
リーダーの両端を固めるのはジェジュンとミンホ。──ミンホはオールブラックコーデで、ジェジュンが春発売だというのを無視した、毛皮の薄手カーディガン。
頭に被るブラウンの女優帽で、色っぽさが増している。
童顔王子を自称しているジュンは、やっぱり可愛らしくて。
アリーは白人の血が入っているので大きく開かれた胸元につく筋肉がアジア人離れして男らしさを醸し出していた。
初めは──どうなることかと思ってた。
帰国してテヒョンの機嫌は悪いわ、レコーディングも初めてのロックに戸惑うわ、LONDも考えすぎて期日ぎりぎりに曲を送ってくるわ……。
役員の何人かに『こいつ正気か?』って顔をされたのは昨日の様に覚えている。
勿論、こんな素人同然の女が考え抜かれたエリートアイドルFBKの路線を変更してスポンサー無視の衣装を着用させる、なんていえばそりゃイヤな顔一つもしたくなるだろう。
だけど──こうやってアイドルの顔になる彼達を数メートル先の至近距離で見て、確信した。
『これは売れる』と──。
売れないと韓国人のセンスを疑ってしまう。