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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第7章 記念すべき四月
「えっ、ちょっとヌナ!」
焦り出すルイ君とは裏腹に、一目散にして駆け出してきたメンバー。放置されたカメラマンやスタッフさんは不思議そうな目で私たちを見ている。
「──ヒョンっ!」
「違う違う!俺は何も言ってないから!」
「……何、泣いてんだよ」
一足先に私の事を自分の胸に包み込んだのは、まさかのジェジュンだった。
バロンでも、何かあったら頼れって言ってくれたこの人。普段はぶっきら棒で何考えてるのか分からないイルトとは違った不器用さをもつ彼だけど──。
もしかしたら、こうなる事が分かってたのかな。
「ルイ君は──、悪くないのっ。」
「……」
「ただ……こうやって頑張りを認めてくれるのが嬉しくて。皆して、こんな私を守ろうとしてくれてるのが嬉しくてっ」
「ああっ、何言ったんすか、ヒョン」
「おいおい、イルト。待てって、俺はただヌナが色々言われてても頑張ってるの知ってるって言っただけだわ」
「色々?」
「お前らのマネージャーになった事で、ヌナ言われてんだろ。心ないこと。」
「──。」
「それでも気付かないフリして、前だけ向いてお前らのデビューのためにこうやって動き回ってるんだよ、この人は。」
「だから誰よりも肝据わってるって言った。それだけの話だから。」
抱き締められた腕に力が込められる。
こんな事で泣いてバカみたいだってわかってるのに。
まるで、いつも私が子供達にしていたみたいにポンポンと優しく背中を叩かれると、何故だか知らないけど不思議と涙が止まってくる。
テテとアイもこういう安心感を持ってくれてたのかな。
「っ、はあ。おい、リサ」
「何っ」
身長差はジェジュンと25cm以上。
すっかりと丸め込まれて、呼び掛けられたイルトの顔は見れなかった。