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さらに近くてもっと甘い
第5章 社長様、発熱中

ふらふらとしながら、なんとかソファーから立ち上がった光瑠は、猫部屋を出る。
「はぁっ……」
ぐにゃりと廊下が歪んで見えて、寒気が全身を駆け巡る。
先ほどまでは、大したことがなかったのに、徐々に悪化してく症状。
風邪を引いたのなんて、いつ振りだろうか……
そんなことを思いながら、懸命に自分の部屋へと進む。
誰かがこちらに向かって歩いている…
でも、焦点が定まらなくて、誰なのか分からない──…
「……ご主人様……?」
「……っ…愛花…?」
たまたま通りかかった愛花は、瞳をトロンとさせている主人の姿に眉をひそめた。
「大丈夫ですかっ…?」
「……愛花……すまないが古畑を…」
いつもとは違う、まったりと話し方。
何だか相当具合が悪そうっ…
「ふっ……古畑さんですねっ…」
「ああ……すまない…」
「っ……!? ご主人様!?」
コテン…と壁に寄りかかった光瑠を、愛花は慌てて支えるが、身体を大きすぎて、愛花の力では支えきれない。
「だっ…だれか!」
スルスルと、ゆっくりと床に崩れ落ちてく光瑠を懸命に支えながら、愛花は広い廊下で声を上げていた。

