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さらに近くてもっと甘い
第11章 社内恋愛
「メガネ……?」
休日に、2人で?という質問は飲み込む。
「はい。幸太郎くん、うちの部署に配属された日、早々に自分のメガネを踏んで壊しちゃって」
その時の幸太郎の様子を思い出して加奈子は、ふふふと笑う。
「へぇ、それで?」
少し要の声音が不機嫌になっているのに、加奈子は気付かない。
「それで、やっぱ新卒のお給料じゃなかなか新しいメガネ買えないみたいで……。度があってない昔のメガネ使ってるんですよ」
少し前、書類をぶちまけていた幸太郎の慌てた姿を思い出す。それに再び笑った加奈子は、だから…と言葉を続ける。
「私から、入社祝いとして買ってあげるって言ったんです」
全く悪気のない加奈子の微笑みを要は黙って見つめる。
なんと声を掛けるべきなのか。
経験のない葛藤が要の心の中で渦巻く。
「あ、あの……副社長?」
黙ったままの要を見て、加奈子はハッとした。
も、しかして……私無神経だった…?
いや、でも、幸太郎くんはただの後輩だし…
私が副社長にゾッコンだってことは副社長が1番分かってるはずだ。
それでも、もしかして妬いてくれているかも、という期待をしてしまうのが、恋する乙女の複雑な心理だ。
「随分……親切だね」
「なんか…ほっとけなくてっ……。あの…でもっ──」
「そういう加奈子の優しいところ、好きだよ」
「──────っ…」