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さらに近くてもっと甘い
第13章 入れ違いに入れ違い



「な…んだ……っ…」


「すっ…すすすすすっ…───」



幸太郎は、慌てすぎて、すみません、の一言が出てこずにいた。


開こうと思っていた扉が突然ひとりでに勝手に開いた事に驚いて、持っていたお茶を現れた麗人にぶちまけてしまった。


それはまさに地獄絵図──……


お茶と資料を社長室に運ぼうとしている加奈子にいい顔を見せたくて、手伝いを名乗り出たのだが、まさか社長にお茶を浴びせるだなんて思ってもみなかったことだ。



「すみませんっ社長……! やけどされてないですか…!?」


声の出ない幸太郎の背後から、現れた加奈子の姿を見て、光瑠は、呆然とああ…と返事をした。



「本当に大丈夫ですかっ……!?」


「………大丈夫だ…」



そもそもぬるすぎるお茶だったのだ。


あれを出されていたらキレていただろうが、浴びさせられるのだったら、今回は、不幸中の幸いだったのかもしれない。



「ひゃあっ…スーツにお茶が染み込んじゃってるし……っ」


「…………………」


「本当に申し訳ございませんっ…! あのっ…私クリーニング代お出し致しますのでっ…!」



深々と頭を下げている加奈子の隣で、幸太郎は、えっ…と声を上げた。



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