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さらに近くてもっと甘い
第13章 入れ違いに入れ違い


「原澤幸太郎くんです…!」



言い淀む幸太郎の代わりに名前を言った加奈子は、頼りある上司を演じようと必死だ。



「やはりな……」



やはり……?


自分のドジはそんなにも有名なんだろうか……


それに愕然としながら、光瑠のオーラに呑まれないように背筋を伸ばす。


頑張ろうとしていても、やはり瞳の奥が微かに怯えているのが分かる。


顎に手を当てた光瑠は、幸太郎の頭の先から足の先までを食い入るように見た。


無造作なのか、寝癖なのか、とにかく彼方此方に向いた毛先。


見るからにどんくさそうな出で立ち。


スーツも、着ているというよりも、着られている。


体格は悪くない…が……。


どこをどう比べても、頭に浮かぶあの部下の方が断然優っていて………



「…………敵じゃない…だろ」


独り言を言った光瑠に、幸太郎は、え……?と声を漏らす。



敵……?って何だろうか。


首を傾げている幸太郎を見て、光瑠はフッと笑うと、そのまま幸太郎の肩に手を乗せた。



「確かに…お前の方がお似合いだと俺は思うが………」


「……?」


「やめておくのが身のためだ」


「…は……い…?」


「まぁ……お前ごときに悶々とするあいつを見るのも中々楽しい……がな。それは俺の都合でしかない」


「───────」


「それに、あんまり悶々としすぎて仕事を疎かにされても困る」


「は…あ…」


なんの話……?



訳が分からないのばかりの幸太郎を見て、光瑠はそのまま幸太郎の肩に乗せていた手をぽんぽんと叩くと、そのままその場を去ろうとした。



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