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さらに近くてもっと甘い
第13章 入れ違いに入れ違い
一々の振る舞いがかっこ良くて、ぼんやりとしてしまう。
しかし、ハッとした幸太郎は、あの!と光瑠に声を掛けた。
「なんだ」
背後からの幸太郎の言葉に光瑠はクルリと振り返る。
「…えとっ……クリーニング代…い、いやっ、スーツ弁償致しますっ…!」
「弁償……?」
「はい…っ!」
「…………お前、全財産叩くつもりか…?」
「えっ……全財産!?!?」
慌てる幸太郎と、その隣でひぇっと声を上げる加奈子を見て、光瑠は意地悪く笑う。
「それでも足りないだろうな。おい、ドジ女」
「は、はいっ…!」
突然呼ばれた加奈子も背筋を伸ばす。
「足りない分はお前の給料から天引く」
「うっ……あ、はいっ…」
「そんなっ…! 僕のミスですから、僕が何としてでも支払いますっ…!」
先ほどまでビクビクとしていた幸太郎の威勢が良くなったのを見て、光瑠は、微かに目を細めた。
………なるほど…こいつも本気…か。
やはり、もう少し関根に忠告しておくべきかもしれない。
そして、
いや私も、いや僕が、と言い合っている2人に、おい、と声を掛ける。
「………冗談だ」
「──────…」
「ギャーギャー騒いでいる暇があったら、もう少し上手い茶を淹れる練習でもしておけ」
「………あ…えあ…はいっ……。本当に申し訳ありませんでした…!!」
深々と頭を下げた2人を尻目に、光瑠はその場を後にした。