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さらに近くてもっと甘い
第13章 入れ違いに入れ違い
有川商事の長い廊下。
加奈子は、全速力で走っていた。
待ってて、なんて言っちゃったけど、別に幸太郎くんに私のデスクまで 来てもらえばいいだけの話だったかも…っ
そんな事を考えながら、加奈子は息を切らせている。
ガサゴソと音を立てているのは手元に持っているタッパーの中身、だ。
「こうたろーくーん!」
慌てて社長室の前に戻った加奈子は、まだ項垂れたままの幸太郎の名を呼ぶと肩を大きく上下させて息を整えていた。
「先輩……?」
「はぁっ……疲れちゃった…」
「あの……」
額の汗を拭っている加奈子を幸太郎は躊躇いがちに見つめる。
急いで何かを持ってきてくれたみたいだけども……
「はい、これ、あげる! ってわぁっ…」
タッパーを開けたはずみに数枚のクッキーが飛び出す。
幸太郎は目を丸くすると、吹き飛んだクッキーたちの内、一枚を慌てて掴んだ。
「ぎゃぁ〜っ…吹き飛んじゃった…」
零れたクッキーを残念そうに拾い集めている加奈子に合わせて幸太郎はその場にしゃがみ込んだ。