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さらに近くてもっと甘い
第13章 入れ違いに入れ違い
再び黒い感情が要の胸にいっぱいになっていく。
「………こんなところで、何をしているのかな」
「え……?」
意図せずとしてキツくなりそうな言葉を修正する。
違う。
そうじゃない。
そう言い聞かせても、全く意味はなく……
「すみません…。あの、僕が仕事出来な過ぎて1人で勝手に落ち込んでて……あ、あの、田部先輩は慰めてくれてて……」
「…………………」
拙い言葉で必死に伝えようとしてくる幸太郎の姿を見て、それはそれでまた胸が痛む。
悪い男でないのなんか、聞かなくても分かる。
知り合ったばかりだというのに、こんな感情を抱くのは理不尽だ。
「いやいや、私は幸太郎くんの先輩な訳だし……」
ニコリと微笑む加奈子。
でも微笑んでいる先は自分ではない───
その事に、要の心がかき乱されていく。
「私の一年目なんて、もっとひどかったですよね?」
「……そんなこと…は……」
微笑まれても気分が晴れない。
それでも感情を押し殺して押し殺して……