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さらに近くてもっと甘い
第13章 入れ違いに入れ違い
「副社長……?」
黙ったままで何も言わない要に、加奈子は違和感を抱いた。
何かおかしい。でも、何のせいなのかが分からない。
「あ…の……」
堪らず顔を覗き込んだ加奈子は、フッと要に目をそらされて、ちくりと胸が痛んだ。
なんで……っ。
今度会わせてって言ってたし、ちょうどいいから幸太郎を紹介しようと思ったけど、こんな素っ気ない副社長は知らない──
「──────ここは…来客エリアだから」
「え……?」
「あまり、騒ぎすぎないように」
「─────……」
目も合わせることなく背を向けた要に掛ける言葉も見つからない。
長い足で、徐々に遠ざかっていく要を、加奈子はぼんやりと眺めていると、幸太郎はふぅ…と息を吐いた。
「副社長はめちゃくちゃかっこよくて、しかもすごい優しいって聞きましたけど…結構怖い人なんですね…」
要が角を曲がって姿を消したのを確認しながら、幸太郎はぼやく。
社長みたいな怖さとはまたちょっと違う。
何だか…無言でも圧力をかけられるような、そんな感覚だ。