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さらに近くてもっと甘い
第13章 入れ違いに入れ違い
「っ………はぁっ……」
先ほど加奈子たちの前で懸命に押し殺した息を吐きながら、要は額に頭を抱えて歩いていた。
経験したことのない苛立ちに戸惑いながら、早歩きで廊下を歩くことしか要にはできない。
悪気のない男だった。
一生懸命で汚れがなくて───……
ならなぜこんなに心が乱れるのか。
加奈子が作ったクッキーも
加奈子が向けた笑顔も
全部、幸太郎に向けたもので……
「らしくないっ……」
こんなことで乱れる性格でない。
それは自分が一番良く分かっているのに、コントロール出来ないことがストレスで堪らない。
ひとまず落ち着こう…
そう考えた要が廊下の角を曲がった時、わっ!と声が上がって要はハッと息を呑んだ。