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さらに近くてもっと甘い
第14章 新しい家族
困り果てる光瑠。
ムキになって奥まで走ったせいで、ベンチは大分遠い。
ふん……とゆっくりと息を吐いて、冷静になる。
今は、ガキ相手の意地はひとまずおいておくべき…か。
時間を考えると、わざと隼人に見つかって会社に戻るのが大人なのかもしれない。
そんなことを考えた光瑠は、ぽりぽりともみあげの部分を掻いた。
生粋の負けず嫌いなのは、10歳相手でも変わらない。
もやもやを残しながらも、光瑠は意を決して木の影から身を出した。
光瑠の茶色がかった髪が風に揺れる。
「……………………」
黙ったまま辺りを見渡すが、小さな少年の姿は見えない。
おかしい……
確かに広い庭ではある。
だがしかし、姿だけでなく声まで聞こえないなんてことがあるだろうか。
「……おい」
試しに声を発するが、鳥が鳴くだけで返事はない。
そろりそろりと歩いていた光瑠は思わず歩くスピードを早めて、ジャケットを置いているベンチへ向かった。