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さらに近くてもっと甘い
第14章 新しい家族
病院の長い廊下を隼人のペースに合わせて光瑠は走っていた。
正直光瑠は病院が苦手だ。
ここにはいい思い出がないのだ。
幾度となく、この場で家族を看取った。
異様に白い感じや、鼻を掠める消毒の香りが、そういった嫌な記憶を呼び起こして、気分が滅入ってしまう。
でも今日は嫌な日ではない。
今、まさに我が子が生まれようとしている。
にも関わらず、過去が邪魔して光瑠は不安に押しつぶされそうになっていた。
もし何かあったら……
子どもの命だけでなく、真希の命まで危ない事態になったら…
そんなことばかり考えては、頭を振る。
「あ、かなめーー!」
前方に見えた、要の姿に隼人が声をかけると、要がハッとして立ち上がったのが分かった。
「隼人…!社長!」
要のもとに着いた2人は、膝に手を当てて、息を整える。
「それでっ……真希は」
「少し前に、分娩室に入りました」
「そう…か…それで、様子はっ……何か問題とかはっ」
ゆらゆらと瞳を揺らしながら、明らかに動揺している上司の様子を見て、要は思わず緩く笑った。