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さらに近くてもっと甘い
第14章 新しい家族
抱いてみますか?と看護師さんに聞かれ、答えることもなく光瑠は自然に両手を差し出した。
その様子に真希も看護師も笑う。
フッと腕に掛かった重み。
光瑠はじっとその小さな顔を見つめながら、色々なことが頭を駆け巡った。
物心ついた時から、
何か足りないような気がしていた。
裕福なのに、何故か心が埋まらない。
理由も分からぬまま、
母を事故で亡くし、
父も自分を置いて死を選び……。
余計に膨れ上がった孤独感。
そんな光瑠の最後の支えだった婚約者も
病に蝕まれ、呆気なくこの世を去ってしまった。
一生、幸せな日など来ないと思っていた。
生きていることはとてつもなく苦しいことで、
悲しいことだとずっと思っていた。
そんな闇の中で、真希に出会って、恋に落ちて……。
初めて心が満ち足りる感覚を知った。
もちろん一緒になるまで、決して簡単な道ではなかったが、
様々な局面を共に乗り越えて、そして今を幸せに過ごせていて……。
ふわぁぁ、と小さな口であくびをする我が子を眺めながら、光瑠の目が潤んでいく。
小さい。
とてつもなく小さい。
でも確かに息をしていて、
必死に生きているその様は、言葉には言い表せないほど力強い。
真希に抱く愛とはまた違う。
新しい愛がじんわりと体から湧き上がってくる。
あぁ……
なんて幸せなんだろうか……
諦めずに
生きて……
そしてこの子に出会えて
本当に良かった。