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【R-34】
第12章 『不知夜月』
叶わないのなら、と必死に彼女から離れようと更に距離を取るのに、その圭吾の苦しい心など知らずに彼女は屈託無く寄り添って笑い掛けてくる。


『お見舞いに来ちゃいました』


彼女にとっては、それが当たり前の事なのか!?

居留守を決め込んだが三度目のチャイムにとうとう辛い体を漸く起こして玄関に立った圭吾に笑い掛ける彼女に、そう思った。



一人暮らしの男の家に一人で訪れるなど、まるで抱いてくださいと言っているようなものとは思わないのか?


頭痛が増したのは熱のせいだけでは無いと思った。

彼女を玄関から中に入れるわけにはいかない。


『わざわざすまない』


そう言って、買ってきてくれた栄養ドリンクや何かしら入ったレジ袋を受け取ろうとするが、真奈はそれを渡そうとしない。





一瞬の間、は今思えば彼女が自らを奮い立たせるのに必要だった時間だったのかもしれない。
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