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【R-34】
第12章 『不知夜月』
『あのっ……私が……ご飯作っちゃ、ダメですか?……迷惑、ですか、ね?やっぱり……』


泣きそうな声に圭吾の心が激しく揺れる。

それは自分に対しての好意、ではない。



勘違いするな。



触れたらきっと、彼女は跳ねるように逃げ出すに決まっている。

そして傷付くのは自分なのだと言い聞かせる。


誰にでも優しいだけの部下だ。


だから、勘違いしてはいけない。


『そういう訳じゃあ……ただ、部屋が汚いから……』

言い訳の言葉を、申し訳なさそうに呟く。


来ると予め知っていたなら、どんなに高熱だろうと片付けておいたのに……。



忙しさにかまけて普段から乱雑な部屋に慣れていた自分を今更呪う。

『お掃除も、して良いですか?』



それなのに、引くどころかその楽しそうな笑顔に圭吾の胸がきゅっと締め付けられた。
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