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【R-34】
第12章 『不知夜月』
『じゃあ……』


そう言って、ベッドの縁に浅く腰を落とす彼女。

『おまじない……』


そう言って圭吾の髪を優しく撫でる。



『浮島主任は良い子。良い子。良い子』

良い子を三回唱え、髪も同じだけゆっくりと撫でる。


その指が、今度は圭吾の顔をふわりと撫でる。

眉から瞼に掛けてを撫でながらまた『良い子』と三回唱える。


一方通行の想いを寄せる相手にこんな事されて、それで眠れる男などこの世には居ない。



それでも、そのひんやりとした指先が心地良く、圭吾は目を瞑る。


『おやすみなさい。また明日』

不意に握られた手。



その指が離れていくのを、追ってはいけない。


圭吾は『ああ』とだけ答えたが目は閉じたままにした。
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