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【R-34】
第12章 『不知夜月』
『すみません、起こしちゃいましたか?……不法侵入みたいでごめんなさい……。チャイム押そうかとも思ったんですけど、起こしたら悪いと思って……』

遠慮がちに優しく微笑む彼女に、将来の彼女の夫は多分世界一幸福者だろうと思った。



それが自分ではないことを知っているからこそ余計に心が苦しくなる。


『こんなに早く来なくても……君にとっては貴重な休日なんだから。こんなおっさんに付き合うなんて、勿体ない』

自嘲気味に笑う。


それには答えずにただ真っ直ぐに見詰め返され圭吾は居心地が悪くなる。

だから、勘違いするな俺。



『……すまない。てっきり、もっと遅くに来ると思っていたから。安易に君に頼り過ぎた。今日は昨日よりも随分と体も楽になったから……もう帰って大丈夫……』



言い掛けた言葉を飲む。
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