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溢れる好きと君へのキス
第2章 **

「ダメですこんなの。」
「時計見えるか?もうとっくに12時近くなってんだよ、危ないからお前はここにいるしかない」
「そんなの!」
「ほら、これ着てないから。さっさと風呂入って寝ろよ酔っ払い」
「もう酔ってない…ふふっ」

吹き出したのは渡したTシャツが入社式でもらう社長の顔入りTシャツだからだろう。身長が高めなのもあって発注ミスのLLサイズを何故か押し付けられてから寝る時のTシャツと化しているこのTシャツは袋のままあと1箱ある。

「いいだろこれなら。我慢しろ、下ないけど」
「いやでも…」
「Tシャツ受け取っちゃったからダメ。」
「…んんんお言葉に甘えて…」

お辞儀をしようとした彼女がふらっと揺れたのを両手で支える。

「やっぱりまだ酔ってるだろ、当たり前だ。水飲んでシャワーだけ浴びるんだなこれじゃ。」

水を取りにキッチンに行くとちょこちょこついてきた。

「松野さん、ネカフェ行かなくっていいです。松野さんが好きでもない女の子としちゃうような人には見えません。信じてるんで。」
「…」

水を受け取り飲み干した彼女を風呂場に連れていく。しばらくしてシャワーの音が聞こえるようになってから自分の部屋へ向かい、クローゼットを開けてネクタイを外す。Yシャツにジャージの部屋着に着替えて毛布をリビングのソファーに持ち出した。

“好きでもない人と”

身体中にこだまするこのフレーズが胸をギュッと縛りつけていくようだった。
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