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溢れる好きと君へのキス
第3章 ***

松野さんが肩を叩くときは『任せた』のサインだ。私を信頼してくれて完全に任せられた案件の時だけ叩かれる。この5ヶ月でされたのは3回だけ。朝ごはんに4回目を使われるとは!


黙って部屋に消えていった松野さんを見送って、私は冷蔵庫の前に立つ。
失礼します…と扉を開けて私は驚いた。
中には普通の一人暮らし料理しない系男性らしく卵、牛乳、味噌、いつかの残りの福神漬けだけがはいっていたが、私が驚いたのは一番大きい真ん中の段を占めていた大量のエナジードリンクと栄養ドリンクだった。
自分の上司はこのドリンクたちを…と思うと胸が苦しくなった。せっかく朝ごはんを作るんだからちゃんと養分を摂ってもらわなければ。

ーーー

「松野さん…?」
さっき入っていった部屋の半開きのドアからちらっとのぞいて声をかけると、松野さんはブルーライト用のメガネをしたまま振り返ってこちらを見た。

えっ…かっこいい。会社ではしていないのに。

「いい匂いするなって思ってたんだよね、できた?」
「できました…!お口に合うかわからないですが」

私がコーヒーを入れてリビングへ行くと、メガネを外した松野さんはローテーブルに並ぶ朝ごはんを見て目をぱちぱちさせていた。

「この野菜どっからきたの?」
「ミックスキャベツ…下の段から見つけたんですが…ダメでしたよね、買ってきます!」
「いやいや素直に驚いてる」

メニューは
トーストとベーコンエッグ、野菜を食べさせたくて野菜室から千切りのキャベツの袋を引っ張りだしてコンソメスープの鍋にぶっこんだだけの簡単スープだ。

「生だと全部食べれられないから絶対摂取量足らないなって思ってたんだよ、お前頭いいな」
「いや…そんなことは…」
「食べようぜ、いただきます」
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