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溢れる好きと君へのキス
第4章 ****
なんだったんだろう。あんな男と1年近くも付き合っていたなんて。つくづく自分がバカらしい。そうは言っても荷物は取りに行かなきゃいけないし…会社を解雇になったのなら家にいる可能性が高い。やはり今日のうちに行かなくては。今日は金曜日なのに仕事がいつもよりも少なく、定時で上がれそうだ。さっさと行って、途中でいいお菓子を松野さんのお礼に買って、さっさと予約したホテルで寝よう。
ーーー
定時まであと1分。
松野さんをちょんちょんとつついて話しかけた。
「今日これで上がってもいいですか?」
「今日はお前色々あったしな、いいよ」
「じゃあお先に失礼しますね!」
「どっか行くのか?」
「一回家帰って荷物取ってきます!」
「 」
定時のチャイムと同時でうまく聞き取れなかった。
「へ?」
「だから、俺も行くっつーの」
「なんでですか!?もう散々迷惑かけましたよ私!いいです行けます1人で!」
「部長からも言われてんだよ、しばらく危ないから気をつけさせろって」
「私が気をつければいいんですよね!それは!!」
「お前腰抜けてただろ、あん時。どうすんの?またされたら。」
「叫びます!」
「声でないだろ、出せてないんだから。」
「出せますって!」
結局言いくるめられ、一緒に来ていただくことになった。
-
「汚いかもですよ?」
「んなもん見ないから、さっさとしろよ」
ガチャ…ギーッ
マンションのドアを開けるとどうしようもない臭いが立ち込めていた。ラブホテルのような。昨日もきっとあの女と。
「…っ最悪」
「…ドア開けっ放しでいいから、どうしようもばいものだけ持ってさっさと出るぞ」
私のスーツケースを探して、印鑑や通帳、仕事の書類、メイク道具、どうしても手放したくない高いカバンや最低限の洋服などを詰める。文庫本などは自分が以前関わったものだけ持ち、他は諦めた。
すると、
「おい誰だ!!!」
酔っ払った声を発して元カレが靴のまま家に入ってきた。