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溢れる好きと君へのキス
第1章 *
ーーー
パソコンの画面を打ちながら時計を確認すると
7時の終業のチャイムから1時間も経っていた。
打ち合わせが一つ相手の部署の都合でなくなったので
余裕をもって3件分のレポートを書き
それぞれ松野さん、部長のチェックを受ける。
部長のデスクから戻ると、椅子をくるっと回した松野さんにツンツンと止められた。
「部長から承認、もらった?」
「はい!今回も一発でしたよ!」
「じゃあそれファイリングするだけだよね、そしたら出れる?」
「…はい。本当にいいんですか?
私が私情持ち込んだ上に私の愚痴にお時間とらせても。」
仕事が忙しくてそんなこと考える暇なんかなかったですよ!といっても、きっと松野さんは嘘だとわかってしまうだろう。
朝のたった数分のことが何度も消えては浮かんでを繰りかえす。
顔に出てしまっていただろうか。
「お時間とらせるも何も、誘ったの俺だし。
俺が飲みたいだけだから付き合うと思ってさ、
話せるだけ聞かせて?」
ーーー
夏がとっくに過ぎてすっかり真っ暗の8時半。
会社の前の灯された街灯の道を2人で歩く。
「店任せてくれる?」
「どこでも大丈夫です!」
「了解。あーそうそう。
昼間のこと部長に報告したからもうしばらくは心配ないよ。」
「昼?ですか?」
「セクハラボンボンだよ」
「あっ…ありがとうございます。
にしてもなかなかパワーワードですね、そんな言葉が松野さんから出てくると思わなかったですよ!」
「そうか?」
少し沈黙が流れる。
いつもはあんなに話せるのに全く話が出てこない。
よくよく考えると、夜の軽食を買いにいくコンビニか外回りくらいしか一緒に出かけたことはなかった。
「ん、ここ」
「めっちゃオシャレじゃないですか…」
「ここ個室なんだよ。お前泣くだろ?」
図星だ。
「あっもしかして来たことあった?」
「いや、初めてです!!」
「よかったよかった」
通されたのは一番奥まった和風の部屋だった。
「お店高くないですか…ほんとに申し訳…」
「いいってば、ほらとりあえず頼めよ」
「…じゃあ…これいただきます!!」