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愛しい記憶
第10章 愛堕(回顧)


黙ったまま、俺は姉ちゃんを家まで引っ張った。



「友也っ……ねえっ…」



背後で何度も俺のことを呼んでいるけど、そんなこと知らない。



とにかくムカついて、家の扉を乱暴に開けると、母さんが目を見開いて、おかえり、と言った。



「一緒だったの?」



「いやっ…あの……」



「………そこで、会っただけ」



「あらそう」



呑気に母さんはそう言って、ソファーに座った。



握っている姉ちゃんの腕が微かに震えている。



俺はその手をそっと離して、自分の部屋に入った。


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