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愛しい記憶
第3章 亡霊
茶色くて長い髪が靡いている。
シャンプーの香り。
やはり胸が締め付けられて苦しい。
家出る間際、クルリと振り返った彼女が微笑む。
「友也…」
「ん?」
「いい加減、荷ほどきしなね」
「…………」
振り返って、段ボールを見つめた。
「せめてカーテンくらい付けなよ」
「……そうだな」
俺は、いつからここにいるんだろう。
いつから、このままなのだろう───
じゃあね、と言って彼女は扉を閉めた。
シーンと静まり返った家。
平気だったはずなのに、突然孤独感が襲って俺は段ボールに手を当てた。