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緑に睡る 〜運命の森〜
第1章 告白
寡黙な男は少ない言葉で…しかし熱意を込めて答えた。
「…ここでまた働きたいです。…紳一郎様のお側にいたいです」
…相思相愛の二人なのだ。当然だろう。
…だが…。

「君は優秀な森番だった。君がいなくなって猟場は荒れたし、鴨もなかなか育たなくてね…。蕗子様に嫌味を言われたほどだ」
実際そうだった。
…全く、こんなにお粗末な猟場ではお客様を招けないわ。
鴨も鴫も未成熟だわ…。
公彦さんも随分貴重な森番を解雇したものね。
仕事も出来てハンサムで…一体何が不満だったの?
解雇した理由も仰らないし…。
案外頑固な方なんだから…。
…そう美しい眉を上げて公彦を睨んだのだ。

十市は喜ぶわけでもなく謙遜するわけでもなく黙って公彦を見つめて佇んでいる。
公彦は眼鏡を押し上げ、語り始めた。
自分自身に言い聞かせるように、慎重に言葉を選びながら…。

「…君をまた森番に雇うことにするよ。
…ただ…私はやはり君と紳一郎の仲を公認する訳にはいかない。紳一郎の父親として、君達の仲を認める訳にはいかないのだ。
…だが、紳一郎の哀しむ貌は見たくない。紳一郎は君を愛していると言った。
…愛ね…。そんなものを信じるほどに紳一郎はまだ若すぎるくらいに若いのだ」
アメジスト色の瞳が瞬かれ、肉惑的な唇が開かれる。
「…俺も紳一郎様を愛しています」
公彦は思わず鋭い声を上げた。
「愛とは何だ?君に紳一郎を守れるのか?紳一郎を幸せに出来るのか?」
十市は押し黙る。
公彦は首を振り、両手を広げた。
「…すまない。君を責めるつもりもないし、君が嫌いな訳ではない。…だが、今のこの日本で同性愛者が幸せになれるとはどうしても思えないのだ。
ましてや紳一郎はこの鷹司公爵家の跡取りだ。…君達が歩む道は荊棘の道なのだぞ…」

十市は暫くして口を開いた。
「…俺は無学です。難しいことは何一つわかりません。紳一郎様を幸せに出来る自信もありません。
けれど…」
暗い闇色の瞳がアメジストの光を帯びた。
「…紳一郎様を命に代えてもお守りすることは誓えます」
「…十市…」
十市は毅然としての頭を下げた。
「…俺たちの仲を認めて下さらなくてもいいです。
ただ、俺が紳一郎様の側にいることだけを許して下さい。…いつでも紳一郎様をお守り出来るように…。お願いします。旦那様」
窓から差し込む陽射しは神々しいまでに十市を照らしていた。




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