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緑に睡る 〜運命の森〜
第1章 告白

「…はなして…ください…」
総毛立つような感覚に困惑しながら、震える声が唇から漏れる。
青山が流れるような動作でサングラスを外し、その雄々しい貌を近づける。
…美しい男は十市で見慣れているはずなのに、不本意ながら思わず目を奪われる。
十市はラテン系ヨーロッパ人のオレンジの薫りが漂うエキゾチックな美貌だが、青山は純粋な日本人の精悍な王者然とした美貌だ。
一見、親しげな笑みを浮かべているのにその実、何を考えているのか分からない端麗な表情が紳一郎には不気味だった。
青山はその滑らかなバリトンの美声で歌うように語り出す。
「…君は頗る綺麗な貌をしているね…。日本人は本当に肌が綺麗だ…。しっとりとした練絹のように美しい肌…。繊細な目鼻立ち…咲いたばかりの薔薇の蕾のような唇…」
上等の絹のような青山の指が言葉通りに紳一郎の貌をなぞる。
紳一郎は金縛りにあったかのように動けない。
「…そして…」
青山の指が紳一郎のうなじに触れ、留まった。
「…君の森番は独占欲が強いのかな。…こんな目立つところに噛み跡を残して…」
紳一郎ははっとなり、青山の手を振り払う。
そして白いシャツの首元を掻き合わせ、震える声で告げる。
「止めてください。…これ以上僕に触れたら、父様に話します」
青山はふっと吐息のように笑い両手を挙げ、運転席に戻った。
「怖がらせたのなら謝る。…それから、私は嫌がる相手に行為を迫ることは、神をかけてしない。信じてくれ、紳一郎くん」
形勢を取り戻そうと、紳一郎は青山を睨む。
「こんな風に触られて、信じると思いますか?」
「…さあ。…だけど…」
ハンドルにもたれかかりながら、興味深げに紳一郎を見つめる。
「…本当に、嫌だった?」
一瞬、言葉に詰まる。
言葉に詰まった自分に衝撃を受ける。
…あの不可思議な感覚は…なんだったのだろう…。
けれど、気丈に唇を引き結ぶ。
「嫌に決まってます。僕には十市というれっきとした恋人がいるのですから」
そして、凛とした声で告げた。
「星南まで送って下さい。ミサに遅刻します」
青山は朗らかに笑い、エンジンをかけた。
「仰せのままに。…麗しの王子様」
総毛立つような感覚に困惑しながら、震える声が唇から漏れる。
青山が流れるような動作でサングラスを外し、その雄々しい貌を近づける。
…美しい男は十市で見慣れているはずなのに、不本意ながら思わず目を奪われる。
十市はラテン系ヨーロッパ人のオレンジの薫りが漂うエキゾチックな美貌だが、青山は純粋な日本人の精悍な王者然とした美貌だ。
一見、親しげな笑みを浮かべているのにその実、何を考えているのか分からない端麗な表情が紳一郎には不気味だった。
青山はその滑らかなバリトンの美声で歌うように語り出す。
「…君は頗る綺麗な貌をしているね…。日本人は本当に肌が綺麗だ…。しっとりとした練絹のように美しい肌…。繊細な目鼻立ち…咲いたばかりの薔薇の蕾のような唇…」
上等の絹のような青山の指が言葉通りに紳一郎の貌をなぞる。
紳一郎は金縛りにあったかのように動けない。
「…そして…」
青山の指が紳一郎のうなじに触れ、留まった。
「…君の森番は独占欲が強いのかな。…こんな目立つところに噛み跡を残して…」
紳一郎ははっとなり、青山の手を振り払う。
そして白いシャツの首元を掻き合わせ、震える声で告げる。
「止めてください。…これ以上僕に触れたら、父様に話します」
青山はふっと吐息のように笑い両手を挙げ、運転席に戻った。
「怖がらせたのなら謝る。…それから、私は嫌がる相手に行為を迫ることは、神をかけてしない。信じてくれ、紳一郎くん」
形勢を取り戻そうと、紳一郎は青山を睨む。
「こんな風に触られて、信じると思いますか?」
「…さあ。…だけど…」
ハンドルにもたれかかりながら、興味深げに紳一郎を見つめる。
「…本当に、嫌だった?」
一瞬、言葉に詰まる。
言葉に詰まった自分に衝撃を受ける。
…あの不可思議な感覚は…なんだったのだろう…。
けれど、気丈に唇を引き結ぶ。
「嫌に決まってます。僕には十市というれっきとした恋人がいるのですから」
そして、凛とした声で告げた。
「星南まで送って下さい。ミサに遅刻します」
青山は朗らかに笑い、エンジンをかけた。
「仰せのままに。…麗しの王子様」

