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緑に睡る 〜運命の森〜
第1章 告白
「…結婚⁈…鷹司夫人…どういうことなのか、ご説明願えますか…?」
そう問いただすのが精一杯だ。
蕗子は、近寄ってきたシャム猫を退屈そうに構い始めた蘭子を見ながら、まるで娘の女学校時代の経歴を明かすかのように淡々と語り始めた。

「…蘭子は妊娠しています。相手は我が家の森番の男です。…それは構わないのです。わたくしが常日頃からとにかく頑強な男の精を受け、鷹司家の子を為すようにと言い聞かせておりましたから。
鷹司家は女系でしてね。しかもなかなか子どもが育たないのです。
わたくしも五人子どもを産みましたが、育ったのはこの蘭子だけ。…相手は屈強な庭師だったわ。だからかもしれません」
ふっと淫らな笑みを浮かべる。
年齢が分からない整った白い貌は、高級娼婦のようでもあり、謎めいた巫女のようでもあった。
不埒な告白に潔癖で禁欲的な育ち方をしていた公彦は、嫌悪から貌を歪めた。

蕗子は全く表情を変えずに続ける。
「…けれど蘭子は気の迷いからその森番と駆け落ちをしようと試みました。すぐに連れ戻しましたけれど、暫くは暴れて大変でしたわ。
…若い娘は厄介なものですわね」
…自分の話をされているというのに、何の感情も現さずに白けたように猫を膝に抱え上げる蘭子の横貌を公彦は見つめた。
…妊婦だというのに余りに淫蕩な色が濃い淫らな、慎ましやかさの欠片もない…しかし、公彦が今まで見たことがないほどに鳥肌が立つような美しい貌であった。

凝視する公彦を蘭子は、庭に咲くライラックほどにも気に留めず、ちらりと視線を当てただけで直ぐに他所に流してしまった。

「…鷹司家の娘が森番と駆け落ちしたなど世間に知れたらさすがに醜聞ですからね。…子どもが生まれる前にお式だけでも挙げなくては…」

公彦は怒りを抑えながら尋ねる。
「お言葉ですが…なぜ私が自分の子どもでないお子を宿された蘭子様との結婚を承諾するとお思いになるのですか?」
蕗子はにっこりと微笑むと、紅い唇を開いた。
「…理由は沢山ありますわ。…まず、貴方のご実家の九条家の家計は火の車でいらっしゃること。…幼い貴方の弟妹様方の学費も覚束ず、華族学院に通うことも困難でいらっしゃるそうね。本当にお気の毒だわ」
公彦は怒りに震える手をぎゅっと握りしめた。
「…それからあとひとつ…」
蕗子の瞳がきらりと妖しく光った。
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