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緑に睡る 〜運命の森〜
第1章 告白
「…公彦さん。…貴方、お子様を持つことは出来ないお身体のようね?」
蕗子の言葉に全身の血の気が一気に引いた。
「…なぜそれを⁈」
そんな個人的な秘密は身内くらいしか知らない筈だ。
「貴方の主治医に伺いましたの。縁談の為にと申し上げたらいとも簡単に教えてくれましたよ。…大切なことですものね。子を為せるか為せないかは…。いくら名門九条家の御曹司でもお子を為すことが出来ないのでは、入り婿のお話もなかなか纏まらないでしょう。
…公彦さんは容姿もおつむも役職も素晴らしいのに、残念なことですわね」
怒りを押し殺した声で尋ねる。
「…そんな私になぜ縁談を…」
蕗子は冷たい公彦の手を握りしめた。
蕗子の手は白絹のようにしなやかであった。
「…公彦さんには蘭子と形だけの夫婦になっていただきたいの。未婚の母のままでは蘭子は貴族社会では生きにくいでしょう。両親揃っていないとお腹の子どもの将来も不利ですわ」
「…そんな…そちらにだけ都合が良い縁談を私が受けるとお思いですか⁈」
語気を荒げる公彦に眉ひとつ動かさずに続ける。
「もちろん、公彦さんにもメリットはありますわ。…縁談を受けて下されば、九条家の借金は全て我が家で肩代わりいたします。…幼い弟妹様がなんのご心配もなく学業を続けられるよう成人されるまで援助いたしましょう。お妹様には将来のお嫁入りのお支度もこちらでさせていただくつもりですわ。
…いかがですか?決して悪い条件ではありませんでしょう?」
屈辱に身体が震える。
今すぐ立ち上がりふざけるなと一喝し、部屋を出ればいいと思いながらも身体が動かない。
蕗子が提案した全てのことは、公彦が喉から手が出るほどに欲しいことばかりだったのだ。

公彦の胸の内を見透かしたように、蕗子は蜜のように甘く優しい声で囁いた。
「ご結婚後は公彦さんはお好きな方を見つけられて構わないのです。…離婚さえ避けていただければ愛人をお持ちになることも自由です。…それは蘭子も同じですけれどね」
高級遊郭の遣り手婆のような文言を囁かれ、公彦の肌は粟立つ。
「…蘭子様は…それでよろしいのですか?」
掠れる声で尋ねる公彦に、蘭子はちらりとこちらを見遣り、また猫に視線を移す。
「…構いませんわ。…私の結婚など瑣末なことですもの…」

茫然とする公彦の耳に蕗子の高笑いが響いた。
「お二人とも聞き分けがよろしくて何よりですわ」



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